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VOL. 80

松が谷団地商店会編
松が谷団地商店会
多摩ニュータウンの団地内にある商店街

小田急多摩線「小田急多摩センター」駅、京王相模原線「京王多摩センター」駅、多摩都市モノレール線「多摩センター」駅よりバスで約10分、または多摩都市モノレール線「松が谷」駅より徒歩10分。松が谷団地商店会は、JKK東京(東京都住宅供給公社)が手掛けた多摩ニュータウンに属する「松が谷団地」の誕生(1976年<昭和51年>)とともに生まれました。多摩ニュータウンは、昭和30年代の深刻な住宅難によって計画された大規模な住宅開発エリア。松が谷団地がある八王子市をはじめ、町田市、多摩市、稲城市の4市に広がっています。
現在は、開発当時に入居した住民の高齢化や、商店、スーパーマーケットの撤退による利便性の低下などの課題が発生しており、コミュニティのあり方も改めて考える必要がでてきました。
今回は、空き店舗の再生事業が評価を受け、JKK東京「地域交流拠点等整備運営事業」、国土交通省「住まい環境整備モデル事業」に選考された「多摩プロジェクト構想」のうち、「コミュニティプレイスまつまる」の立ち上げ時から現状について、お話をお聞きしました。

  • 松が谷団地商店会
    今回お話を伺った、松が丘団地商店会の五十嵐会長(左)、一般社団法人コミュニティネットワーク協会の渥美京子理事長(右)。
  • 松が谷団地商店会
    団地の敷地内に広がる商店街。
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    「コミュニティプレイスまつまる」の開所1周年を記念して開催された、夕涼み会の様子。
心地よい暮らしを創造するために、プロジェクトに着手

松が谷団地商店会には、JKK東京が所有するスーパーの跡地があり、この場所を地域交流拠点として利活用する方法をプロポーザルで公募。採択されたのは「一般社団法人コミュニティネットワーク協会」の提案でした。「私たちは、介護保険事業と障害者福祉事業を手掛けており、双方の組み合わせが可能。団地が抱えている課題解決に寄与できると確信しました」と渥美理事長。これまでの経験を生かしながら、「誰もが生きることが心地よい」と感じられる多世代多文化の交流拠点を作るべく、プロジェクトをスタートさせたそうです。

松が谷団地商店会
スーパー跡地の内観(着工前)。
団地の中にある商店街では地域の理解が重要

団地内の建物を利活用するとあって、地域住民の理解は必須条件。2021年3月14日には「第1回地域住民説明会」を開催し、意見交換の場を設けました。この説明会では、事業計画をトップダウンで伝えるのではなく、あえて白紙の状態で臨んだといいます。こうすることで、住民がこの事業を自分事として考えられるようになるというのが狙いでした。
その後、住民参加型の学習会を開催し、事業内容の具現化を目指したとのこと。事業を始めたい人や交流拠点づくりを手伝いたい人、拠点を利用したい人などが意見を出し合い、課題解決に向けて真剣に取り組んでいきました。
スケルトンだった店内は、住民の手で施工し、2022年(令和4年)7月「コミュニティプレイスまつまる」がオープン。住民の意見を反映し、飲食店、ショップ、カフェ、図書コーナー、卓球場、カフェ、キッチンスタジオ、トレーニングスタジオなどを備えた地域交流の場が誕生しました。

松が谷団地商店会
オープン当初の店舗外観。
オープンから約2年が経過し、次のステップへ

現状の「コミュニティプレイスまつまる」についてお聞きすると、「意見を募った拠点づくりには成功しましたが、継続の難しさに直面しているところです。今後は、ターゲットを高齢者や障害者、子どもに絞ってこの場所の在り方を検討していきます」と渥美理事長。オープン当初は話題性もあり、多くの利用客でにぎわったそうですが、価格帯のミスマッチなどが原因で、飲食店やショップ、カフェが撤退し、現在は卓球場や図書コーナー、トレーニングスタジオなどが機能しています。
卓球場は、協会の特性を生かして障害者が働ける仕組みを構築。愛宕団地にある協会運営の高齢者施設から利用者を卓球場に招き、ボール拾いは障害者が行って雇用機会を創出。卓球の指導は、この活動に賛同した元世界チャンピオンが担い、スポーツを通した交流の場が生まれています。
2024年6月からは空いたカフェスペースを利用し、日替わり定食をワンコインで提供する飲食店をオープン。店長を障害者に任せ、やりがいや生きがいを感じてもらいながら自立を促しているそうです。
「『コミュニティプレイスまつまる』は、また違う歩み方を始めましたが、立ち上げからこれまでの経験は生かせると思っています。人は結果でしか評価してくれないんだということも学びました。これからも、住民、店主、行政すべての利益につながる活動をしていきたいです」と五十嵐会長。挫折も含めた学びが、今後の発展に大きく寄与していくのだろうと感じた取材となりました。

松が谷団地商店会
卓球場のひとコマ。競技を通してコミュニティが生まれているほか、障害者の雇用機会を創出している。
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