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VOL. 67

中野南口駅前商店街編
中野南口駅前商店街
中野駅南口に広がる、3ブロックからなる商店街

中野南口駅前商店街はJR「中野」駅の南口駅前ロータリーから五差路付近まで続く、50年以上の歴史がある商店街。「駅前ブロック」、「ファミリーロードブロック」、「中野通りアーケードブロック」に分かれており、85の会員店が元気に営業しています。かつては生鮮三品を扱う店舗もある商店街でしたが、現在は、飲食店、マッサージ店、コンビニエンスストアなどの、サービス業やナショナルチェーンがメイン。乗降者数が多い駅前に立地していることもあって、空き店舗がでるとすぐに埋まってしまうということです。

今回は、中野南口駅前商店街の吉田稔夫会長に、概要やイベント、さらに「令和3年度商店街デジタル化モデル事業」に応募し、採択された商店街のキャッシュレス化についてお伺いしました。

  • 中野南口駅前商店街
    今回お話をうかがった吉田会長。生まれも育ちも中野という生粋の中野っ子です。
  • 中野南口駅前商店街
    人の往来が多い商店街の様子。商店街の街路灯や照明にはすべてLEDを導入しています。
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    長く営業を続けている、そば店「さらしな総本店」の外観。ほかにも、生花店やコーヒーショップなどの老舗があります。
イベントから店舗への来店へつなげた、200円割引券

コロナ禍の影響で、定期的に行われたイベントは次々と中止に。徐々に規制が解かれていく中、2021年と2022年には、秋のビッグイベントである「南口わいわい祭り」を開催することができたそうです。「2013年から毎年開催していたイベントです。ファミリーロードを通行止めにして、ライブペインティングを行うほか、子どもたちが自由に描ける落書きコーナーを設けています。また、三菱UFJ銀行 中野駅前支店の駐車場では『わいわい広場』と称して、子ども向けワークショップや縁日、音楽ライブを開催するんですよ」と、イベントの内容を話してくださった吉田会長。来街者と商店の双方がうれしい企画はないかとも模索され、協力店舗で500円の買い物をすると利用できる200円割引券の発行を考案。先着3,000名に配布し、商店街の利用促進へつなげたとのこと。「利用者にとって、500円のものが300円で手に入るというのはとても大きいこと。さらにお店側も来店者が増えればうれしいですよね。もちろん、200円の割引分は商店街で負担しています」と、イベントに絡めた集客につながるアイデアも教えてくださいました。

中野南口駅前商店街
多くの人でにぎわう「南口わいわい祭り」の様子。子ども向けのワークショップでは、特にペンダント制作が盛況だったそうです。
お客さま目線でキャッシュレス化を決意

コロナ禍で、会費を集めていながら約2年間何もできなかったことを気にされていたという吉田会長。 近い将来 商店街会員に何か役に立つものはないかと考えていたところに、キャッシュレス導入の補助金事業の話があり、「これだ!」と思い応募されたそうです。 導入を決意した経緯を伺うと、「キャッシュレスの話は以前よりありましたが、まったく乗り気ではなく・・・。自分自身がずっと『いつもニコニコ現金払い』という考えかたでやってきていて、キャッシュレスにする必要性を感じていませんでした。でも、あるとき妻が、『コロナ禍なのにキャッシュレス対応をしていないお店だったから、買い物をしてこなかった』という話を私にしてきたんです。その時、『そうか。自分目線で考えたらだめだ。お客さん目線で考えたら、導入すべきなんだ』と気付いて、キャッシュレス化を商店街で進めていこうと思い立ちました」と明かしてくださいました。ただし、吉田会長だけではまかないきれない部分もあるため、ITに強いコーディネーターに伴走してもらいながら、進めていかれたのだそうです。

中野南口駅前商店街
タブレット端末が届かないというハプニングもあったそうですが、2022年2月ごろから、各店での稼働が順次始まりました。
キャッシュレス化が、商店街のIT化促進のきっかけに

いざ提案を始めてみると、反対の声も聞かれたとのこと。しかし、お客さん目線が大切と説得し、導入する店舗を増やしていったそうです。また、導入だけでなく、導入後も含めてすべてのステップで協力すると伝え、ITに苦手意識のある店主にも安心してもらえるようにしました。 ふたを開けてみると、まずはWi-Fiの環境すらないお店があるなど、想像以上に手がかかることもあったようですが、現在は35店舗とほとんどの店舗で導入(※すでに導入済みのナショナルチェーンなどは除くため、この店舗数となっています)されています。この取り組みは「令和3年度商店街デジタル化モデル事業」にエントリーし、採択された事業でもあります。 キャッシュレスの導入は商店街でのIT化にもつながり、紙や電話でやりとりしていた連絡事項は、今ではSNSのグループで共有できるようになったとのこと。キャッシュレス化が、商店街の運営にも好影響を与えることとなりました。

中野南口駅前商店街
電子決済を導入したお店の店頭。試行錯誤しながら、皆さん前向きに取り組まれていらっしゃいます。
これからも来街者増になることを考えていきたいです

現在、駅前の再開発が進んでいる中野駅周辺。「以前私の親は南口の駅前で飲食店を経営し、子どものころは店の3階に住んでいましたので、正に駅前育ちです。後に家業を継いでいたのですが、30年ほど前に周りの地権者が集まって共同ビルを建てるときに廃業し、現在では賃貸業を生業としています。そのビルも再開発エリアの対象となり、現在は来年3月の竣工に向けて工事が進んでいます」と教えてくださった吉田会長。中野の歴史をずっと見続けていらしたということで、駅前の不二家には、かつて2階に飲食スペースがあったと教えてくださいました。
地域活動も盛んで、防犯パトロール、清掃活動、年末夜警などにも積極的に取り組んでいる、中野南口駅前商店街。今後は、駅前再開発事業(中野2丁目地区市街地再開発事業)の理事長に就任されるという吉田会長ですが、「立場が変わっても、商店街の来街者増につながるようなことを考えていきたいです」と笑顔で話してくださいました。

中野南口駅前商店街
各店舗の看板には、フラッグが吊り下げられるようになっています。伺ったときは、2023年7月に閉館が決まった中野サンプラザの広告が掲出されていました。
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