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VOL. 65

福生武蔵野商店街振興組合(福生ベースサイドストリート)編
国道16号線をはさんで横田基地と隣接する、アメリカに一番近い商店街

東京都の西部に位置する福生市は、アメリカ空軍の基地である「横田基地」とともに発展してきた街。もともと横田基地は旧日本陸軍の施設があったところで、1945年(昭和20年)の終戦の際に米軍に接収されて誕生しました。当時、たくさんの米軍人たちでにぎわった福生市は、1960年(昭和35年)ごろになると米軍の規模が縮小されて米軍人たちが減少。その後は徐々に、都心に通勤する人々のベッドタウンとしての色合いが濃くなっていきましたが、今なお街中にアメリカの文化が息づいています。
そんな福生市のほぼ中央を南北に走る国道16号線に沿って、総延長約1キロに及ぶ商店街が「福生武蔵野商店街振興組合」、通称「福生ベースサイドストリート」です。すぐ目の前に横田基地を望む通りには、アメリカンムード満点のアンティークショップや雑貨屋、古着屋、アートギャラリー、カフェなど、さまざまな店舗が60軒超も建ち並び、日本にいながらアメリカの空気を感じることができます。
今回は、2021年(令和3年)よりこの商店街の代表を務められている稲垣美彦理事長から、近年の取り組みに関するお話をお伺いしました。

  • 福生ベースサイドストリートの最寄駅であるJR青梅線の牛浜駅。東口を出て10分ほど歩けば、国道16号線沿いの商店街に着きます。
  • 国道16号線沿いに設置された、福生ベースサイドストリートの案内看板。初めて訪れても、お目当てのお店の場所をすぐに見つけられます。
  • ご自身が施設長を務める特別養護老人ホーム「ヨコタホーム」のエントランスで、商店街のオリジナルベンチに腰掛ける稲垣理事長。生まれも育ちも地元、福生の方です。
福生の街の建築遺産「米軍ハウス」を借り上げて有効活用し、地域の文化を守る

福生市には、この街ならではの珍しい建築遺産があります。それは「米軍ハウス」と呼ばれる平屋の建物。これは米軍人が暮らす家として、終戦間もない1950年(昭和25年)ごろから、福生市内に1,000棟以上も建設されたものです。しかし、1960年(昭和35年)ごろに米軍の規模が縮小されたことを受けて、米軍ハウスはだんだん減っていきました。1970年(昭和45年)ごろからはアメリカの文化にあこがれる若者の間で人気を博し、米軍ハウスに住む若年層の日本人が増加。そして、独特なファッション、音楽、アートなどの発信拠点となり、注目されたこともありました。
現在、米軍ハウスは老朽化が進んだことによってさらに減っており、希少性が高いものとなっていますが、福生武蔵野商店街振興組合ではまだ残っているものの1棟を借り上げています。そして「FUSSA American HOUSE」というネーミングで、ヨガスタジオとして利用したり、写真展を開催したり、さまざまな用途で有効活用。地域の文化として、後世に残すための取り組みを行っています。

国道16号線から少し牛浜駅寄りの場所に建つ、「FUSSA American HOUSE」。ブルーの外観がさわやかです。
海外の方も多く参加する国際色豊かなイベントで、街全体が盛り上がる

福生市では横田基地があることから、海外の方もたくさん参加する楽しいイベントが定期的に行われて街全体が盛り上がり、「福生ベースサイドストリート」もその都度たいへんなにぎわいを見せます。
最も大規模なイベントは横田基地主催の「横田基地日米友好祭」。日米のバンドなどのパフォーマンスや飛行機の展示など、さまざまな催しが国際色豊かな会場で行われ、いろいろな国の人々とふれ合うことができます。また、福生武蔵野商店街振興組合も共催している「インターナショナルフェア」も人気のイベント。ここでしか見ることのできない横田基地特殊車両のほか、マーチングバンド、クラシックカー、ハーレーなどが参加するビッグパレードは見ものです。また、これらの大規模なイベントのほかにも、スポット開催の小規模なイベントもよく行われています。
これらのイベントは、昨今のコロナ禍で残念ながら中止を余儀なくされていましたが、2022年(令和4年)には「横田基地日米友好祭」も「インターナショナルフェア」も無事に再開されました。

2022年(令和4年)に再開されたインターナショナルフェアのフライヤー。左が表面、右が裏面です。コロナ禍という状況に配慮し、特定の場所に人を集めるのではなく、各店舗でスクラッチカードを配布するという形で行われました。
アメリカンテイストを強調しながら、商店街全体の一体感と連帯感を向上

近ごろではだんだんコロナ禍以前のにぎわいを取り戻しつつある福生ベースサイドストリートですが、やはりまだ思うような活動ができないことによるトーンダウンは否めません。そこで、福生武蔵野商店街振興組合では今、商店街全体の一体感と連帯感を高めるための取り組みに力を注いでいるそうです。その一つが年末年始のイルミネーション事業。以前よりクリスマスからお正月にかけて、商店街内の公園にイルミネーションを飾っていましたが、それを商店街全体に展開しようという考えで、2022年(令和4年)には各店舗に光るリースを配布して飾ってもらいました。さらに、商店街のロゴマークを配した、アメリカンテイストにあふれるフロアマットや、扉に吊り下げるオープンクローズ看板を作成。各店舗で利用してもらうことで商店街内に統一されたイメージを創出しています。
これらの取り組みについて稲垣理事長は「まだコロナ禍の影響が残り、活動が制限されている状況なので、今のうちに地道な取り組みによって商店街全体の一体感と連帯感を高めておき、時機が来たらすぐにみんなで力を合わせて動き出せるように準備を進めているところです」と語ってくださいました。個性豊かな数々の店舗が一つにまとまることで、商店街全体としての魅力をより増していく福生ベースサイドストリート。いつ訪れてもアメリカの風が吹いている素敵な商店街として、これからも日本人、外国人を問わず多くの人々を魅了していくことでしょう。

2021年度(令和3年度)に作成された商店街のオリジナルフロアマット。オープンクローズ看板と共通のアメリカンテイストにあふれるデザインとなっています。
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