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VOL. 63

東京合羽橋商店街振興組合(かっぱ橋道具街) 編
世界に誇る豊かな日本の食文化を、道具の面から支え続けている商店街

「食」に関わるさまざまな道具を扱う商店街として全国的に有名な「東京合羽橋商店街振興組合」、通称「かっぱ橋道具街」。南は浅草通りの菊屋橋交差点から、北は言問通りの金竜小交差点まで、都道56号線に沿った約850メートルの区間に、包丁、暖簾、看板、置物、什器などを扱う店舗がひしめき合う様子は、さながらテーマパークのようです。
その歴史の始まりは大正時代の初め。現在、この商店街がある場所には、当時、新堀川という川が流れていましたが、その両岸に古道具を商う人々が出店したことが発祥とされています。そして、関東大震災後の復興とともに、菓子道具を扱う商店を中心に「食」に関連する店舗が集まり始め、さらに戦後の昭和20年代以降は、その時々の飲食業界のニーズに対応した多種多様な店舗が集積。個性的な専門商店街として、今日まで発展を続けてきています。 今回は、2019年(平成31年)よりこの商店街の代表を務められている本健太郎理事長から、商店街の取り組みに関する興味深いお話をお伺いしました。

  • 都道56号線。「かっぱ橋道具街通り」とも呼ばれており、この道に沿って約160軒もの「食」に関わる道具店が建ち並んでいます。
  • かっぱ橋道具街が誕生90年を迎えるにあたり、2003年(平成15年)に設置された、PRキャラクター「かっぱ河太郎」の像。かっぱ橋道具街通りのほぼ中間の地点で、この商店街を見守っています。
  • ご自分のお店である陶器店「小松屋」の前に立つ本理事長。小松屋は明治時代の終わりから続く老舗で本理事長は4代目の店主になります。
「かっぱ橋道具まつり」の開催で、商店街の魅力を一般の人々にもアピール

かっぱ橋道具街はもともと「食」のプロがこだわりの道具を求めて訪れるところで、一般の人々はあまり立ち寄る機会のない商店街でした。そこで東京合羽橋商店街振興組合では、この特徴的な商店街の魅力をもっといろいろな人たちに知ってもらいたいとの思いから、1983年(昭和58年)より「かっぱ橋道具まつり」を開催しています。
10月9日を「道具の日」と銘打ち、10月9日前後の1週間にわたって実施されるこのイベントでは、各店舗のおすすめ商品を特価販売する「かっぱ市」をはじめ、くじ引きやクイズラリーなど、数々の催しが行われます。それらの中でも「道具の日」の当日、日ごろ使用している料理道具に感謝するために商店街裏手の矢先稲荷神社で執り行われる「道具供養祭」は大切な行事です。そして、クライマックスを飾るのは、地元小学校のブラスバンドパレードと東京消防庁の防火パレード。最終日に都道56号線の商店街の区間を歩行者天国にして行われるもので、毎回たいへんな盛り上がりを見せます。
このイベントは大評判となり、現在ではたくさんの一般の人々がこの商店街を訪れるようになりました。

2022年(令和4年)に開催された「かっぱ橋道具まつり」における、東京消防庁による防火パレードの模様。
「和」の文化に関心が高い、外国人の方々もたくさん訪れてにぎわいを見せる

一般の人々のほか、10年ほど前から増えてきたのが海外からのお客様だそうです。特に多いのは「和」の文化に関心が高い傾向のあるフランス、アメリカ、中国、韓国といった国々の人。遠い国からわざわざこの商店街まで買い物に来られる理由としては、業務用のしっかりした道具が安価で手に入ること、お店がたくさんあるので選ぶ楽しさがあることなどが挙げられるようです。
このようなワールドワイドな人気のため、コロナ禍が到来する前はインバウンド需要がかなりあり、お店ではさまざまな外国語が飛び交っていました。そこで、外国人の方々にも親切丁寧な接客をするために、外国語を話せるスタッフを用意するお店が増えたそうです。さらに商店街としても、お店の場所や取り扱い商品などをご案内するために配布している便利マップは、通常の日本語版のほかに英語版も用意。さらに、商店街のホームページに関しては4言語対応としています。
残念ながら昨今のコロナ禍によって、海外からのお客様はしばらく減っていましたが、現在は徐々にまた以前のような活況を取り戻しつつあるとのことです。

かわいいかっぱ河太郎のイラストが目を引く、かっぱ橋道具街の便利マップ。上が日本語版、下が英語版です。
個店の魅力を最大限に発信し、「プロを支えるプロの街」への原点回帰を図る

いくつもの取り組みを通して、一般の人々、外国人の方々と、着実にお客様の層を拡大してきた東京合羽橋商店街振興組合。商店街として順風満帆のように思えますが、現在も課題としていることがあるそうです。それは、かつてメインのお客様だった「食」のプロに戻ってきていただくこと。一般の人々や外国人の方々への対応に力を注ぐことで、プロの職人たちへのアピールが少々不十分だった期間を挽回するために、商店街では対策を講じ始めています。
この動きについて本理事長にお伺いすると「圧倒的な商品量や専門的な商品知識など、かっぱ橋道具街の魅力をあらためて知っていただくため、寿司屋や蕎麦屋などの組合に積極的に顔を出して営業活動を行っているところです。産業展などの際に、かっぱ橋ストリートというコーナーを設置してそれぞれのお店をもっとアピールしていくことを企画していますが、まずは最近のかっぱ橋は何か違うと気に留めていただくことが第一歩と考えています」と語ってくださいました。個店の魅力を最大限に発信することで、自らの足元をもう一度固めようとしている東京合羽橋商店街振興組合。道具を通して日本の食文化の発展に貢献する独自性に満ちた商店街として、これからも特別な輝きを放っていくことでしょう。

1951年(昭和26年)の創業で70年超の歴史を誇る、料理道具・製菓パン器具の「三木商店」。業務用の鍋やフライパン、中華鍋、ボール、ざる、まな板などを多数取りそろえた、まさにかっぱ橋道具街を象徴するようなお店です。
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