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VOL. 62

地蔵通り商店街振興組合 編
お地蔵様に見守られながら、いくつもの時代を越えて発展してきた商店街

日本が「富国強兵」のスローガンのもとに発展を目指していた明治時代のこと、現在の後楽園には軍事工場や縫製工場がありました。そして、そこへ早稲田方面から歩いて仕事に向かう人が増え、その道中の江戸川橋には、人々が休憩する場所としてお団子屋やお茶屋などが建ち並ぶ通りが生まれました。その通りは、神田川の氾濫によって流れてきたお地蔵様が祀られていたことから、大正時代より「地蔵横丁」と呼ばれ始めます。
さらに時代は移り変わり、「地蔵横丁」はやがて「地蔵通り」へと名称を変更。現在は、江戸川橋通りから東西約250メートル、南北約150メートルに十字を描いて延びる道に沿って、約80もの店舗が軒を連ねています。それが「地蔵通り商店街」。昭和時代の終わりごろに親睦会から振興組合となり、「地蔵通り商店街振興組合」としてさまざまな活動を展開し、地域の人々に親しまれています。
今回は2020年(令和2年)からこの商店街の代表を務められている、野村幸枝理事長にいくつかの取り組みについて興味深いお話をお伺いしました。

  • 商店街の名称の由来となっている「子育地蔵尊」。お祀りして以来、この地に育つ子どもはみんなよい子に成長したことからこのように呼ばれています。また、戦災や大火にも見舞われないことから「火伏せ地蔵」という別名もあります。
  • 街路灯のフラッグに見えるキャッチフレーズ「横丁物語」には、「どの店にもみんな物語がある」という思いが込められています。
  • ご自分のお店であるパン屋「サンエトワール」の前に立つ野村理事長。趣味は旅行で、お休みの日はほとんど出かけているそうです。
年間を通して数々のイベントが開催され、たくさんの人々でにぎわいを見せる

地蔵通り商店街振興組合の活動の特徴として、イベントを数多く開催していることが挙げられます。「青空市」「節分祭り」「ふるさと祭り」「ハロウィン」など、年間を通してたくさんのイベントを実施。東西で約5メートル、南北で約7メートルという狭すぎず、広すぎずの地蔵通りの程よい道幅が活かされたそれらのイベントは、いつもたくさんの人々が集まり大盛況となっています。特に近年は、江戸川橋に新しいマンションがたくさん建てられ、近隣に若いファミリー層が増えてきたことを背景に、参加者の数がさらに多くなり、年齢層も幅広くなっているそうです。
現在でもほぼ毎月のように行われている地蔵通り商店街振興組合のイベントですが、今後もいろいろなアイデアを活かした新しいイベントの企画が進行中で、地域の人々からの期待も高まっています。

2022年(令和4年)に行われた「ふるさと祭り」の模様。地蔵通りの真ん中に、パラソルとテーブルが設置され、青空レストランがオープン。3,000~4,000人ほどの人々が集まってにぎわいました。
誰もが安全に快適にお買い物をしていただくためのサービスをご提供

日々、老若男女さまざまな人々が訪れるこの商店街では、足腰の不自由な高齢者など、いわゆる「買い物弱者」と呼ばれる方もたくさんいらっしゃいます。そのような方々にも安全に、快適にお買い物を楽しんでいただきたいとの思いから、文京区の補助金を受けて始めた取り組みが「横丁便」です。これは、商店街から1.2キロメートル圏内にお住まいのお客様に限り、商店街でお買い物をした荷物をご自宅までお届けするというもの。サービス開始以来、たくさんの方がご利用されています。
また、このサービスはコロナ禍によって、外出を控えざるを得ない状況となったことを受け、サービスの範囲を拡張。電話1本でお買い物自体の代行も請け負うことにしました。もともと文京区ではここまですることを認めていなかったのですが、困っているお客様のことを思った地蔵通り商店街振興組合が、わざわざ文京区にお願いして許可をいただいたということです。

「横丁便」のパンフレット。お買い物に関することだけでなく、電球や蛍光灯の交換、家具の移動などまでお手伝いする新サービスも紹介されています。
プラットフォーム化の推進によって、商店街全体を一つの大きな店舗のように

数々のイベントをはじめとする商店街の活動を円滑化するには、連絡網の整備が必須となりますが、地蔵通り商店街振興組合ではLINEを有効活用しているそうです。商店街会員はみんなグループラインに入っており、連絡事項はリアルタイムで全員に伝えられます。このような一体感のある動きの背景には、商店街が推進しているプラットフォーム化のねらいがあるとのこと。これについて野村理事長は「各店舗がそれぞれに何かを行うのではなく、商店街全体をあたかも一つの大きな店舗のように機能させて、お客様に楽しんでいただくことが目標です。その基盤となるものに、商店街の全店舗で使えるポイントカードのJカードがありますが、今後さらに会員数を増やしたり、利用の簡易化を図ったりするため、読み取り機にかざすだけの非接触型のものに変えていくことを現在検討中です」と語ってくださいました。
プラットフォーム化によってすべての店舗が一体となり、また連携することで、単純な店舗数のトータルである約80ではなく、それ以上の100、そして200の魅力を発揮していこうとする地蔵通り商店街振興組合。これからもお地蔵様のご加護のもと、地域の人々に愛される商店街として着実に発展を続けていくことでしょう。

現在使用されているJカード。かつては台紙にシールを貼り付けていく形式だったそうです。今後もさらに進化を遂げていきます。
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