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VOL. 51

八幡山商福会商店街振興組合 編
八幡山の街とともに歩み、2022年に67周年を迎えた歴史ある商店街

日本有数のビッグターミナル、新宿駅から京王線の電車に揺られること約16分。閑静な住宅地が広がる八幡山駅に到着します。改札を抜けると目の前を走る赤堤通りを中心に、約65店舗が集まる商店街が「八幡山商福会」。1955年(昭和30年)に誕生し、今年で67年目を迎える長い歴史を持つ商店街です。
八幡山商福会が商店街振興組合となったのは2013年(平成25年)のこと。そのきっかけは、東日本大震災の際に発生した停電でした。信号以外の光がすべて消え、商店街が真っ暗になった時期があり、街路灯の設置が求められたことを機に法人化へと踏み切ったのです。
八幡山商福会が商店街振興組合となる前より会長を務め、この商店街を長きにわたって率いてきたのが小塚千枝子理事長。都内でも数少ない女性理事長として、これまでに行ってきた取り組みの数々について語っていただきました。

  • 八幡山駅前の赤堤通り。八幡山商福会はこの道を中心に、世田谷区と杉並区の2区にわたるエリアに広がっています。
  • 2013年(平成25年)に設置されたLED街路灯は49本。そのうちの2本は太陽光発電機能を備え、電気料金の低減に貢献しています。
  • 赤堤通りに立つ小塚理事長。世田谷区商店街連合会では、女性部の副部長を務めていらっしゃいます。
商店街と地域の人々のために続けてきたイベントが、八幡山の風物詩に

小塚理事長が商店街のリーダーとなった際にまずやりたいと思ったのは、商店街を元気づけ、地域の人々に喜んでいただけるイベントを開催することだったそうです。それまで、商店街のイベントといえばお盆と年末くらいしか行っていませんでした。そこで、縁日を開催したところ大好評。この成功を受け、2000年(平成12年)より小塚理事長が自らネーミングした「わっしょい!!八幡山」というイベントを、毎年秋に開催することになりました。福引、ビンゴ大会が行われ、阿波踊りやフラダンスのグループなども参加し、街はお祭りムードに包まれます。もうすっかり定番のイベントとして定着し、八幡山の秋の風物詩となりました。
一方で、夏の風物詩となっているイベントが「早朝ラジオ体操の集い」。最初は地元の野球少年たちによる小規模なものでしたが、最近ではおよそ400人もの老若男女が集まる大イベントになりました。地域の人々のコミュニケーションの場、健康増進の場となっているのはもちろんですが、このイベントには一つユニークな特徴があります。それは、参加すると「貯筋通帳」にスタンプがもらえること。このスタンプはお買い物券として使え、商店街の集客に貢献しています。

「貯筋通帳」のスタンプは、1日の参加で1個もらえて200円分のお買い物券になります。5日通うと1,000円分です。
周辺の商店街、そして電鉄会社までも巻き込んで拡大した「街バル」

八幡山商福会にはもう一つ、忘れてはならない人気イベントがあります。それは「ちょい飲み&つまみ食い」。いわゆる「街バル」ですが、実は世田谷区ではここ、八幡山が元祖なのです。「八幡山商福会は飲食店が中心の商店街。おいしいお店がたくさんあることをもっと多くの人に知っていただきたい」という小塚理事長の熱い思いから、2014年(平成26年)に第1回が開催されました。参加店舗はお料理1品と1ドリンクのお得な特別セットを用意し、チケット1枚と引き換えでお客様にご提供します。このシステムによって、ふだんはなかなか行く機会のないお店にも気軽に入れて、八幡山商福会の飲食店のおいしさとコストパフォーマンスが広く知られることになり、リピーターも生まれました。今や休日ともなれば、予約なしでは入れないお店も多くなったといいます。
このイベントが成功すると、小塚理事長は世田谷区商店街連合会で「街バル」に関する講演を依頼されるようになりました。また、ほかの商店街へレクチャーに訪れる機会も増えたそうです。最初は乗り気ではなかった商店街の人が、小塚理事長の話を聞いているうちに身を乗り出してくるようなこともあったといいます。そのような小塚理事長の「街バル」の啓発活動は2020年(令和2年)、京王線沿線の6駅合同開催の「ぶらり各駅バルめぐり」として結実。参加店舗が115軒にも上る大規模なものとなりました。この動きには京王電鉄も反応。ポスターの掲示やチラシの設置で周知に協力するほか、このイベントのための一日乗車券も発行しました。一商店街のイベントが周辺の商店街、そして電鉄会社までも巻き込んで拡大したのです。

「ぶらり各駅バルめぐり」のパンフレットと第6回「ちょい飲み&つまみ食い」のチケット5枚綴り。前売券(右)は当日券(左)よりも1枚あたり100円お得になっています。
いつまでも活気あふれる商店街であり続けるため、若い力を育てていく

このようにイベントが盛んで、飲食店が多い八幡山商福会にとって、突如訪れたコロナ禍によるダメージはたいへん大きなものでした。これまで続けてきたイベントは中止せざるを得なくなり、緊急事態宣言下で不自由な営業を余儀なくされた飲食店は経営が逼迫。小塚理事長は給付金の申請方法がわからないという店主のために、行政書士を招いて説明会を開催するなど、親身のサポートを行いました。その甲斐もあり、商店街内でコロナ禍によって閉店に追い込まれたお店はまだ1軒もないそうです。
コロナ禍という逆境にも負けない八幡山商福会は、いつまでも活気あふれる商店街であり続ける強さを秘めた商店街のように思えますが、小塚理事長は一つ大きな課題があるといいます。「八幡山商福会が末長く元気な商店街であるためには、役員の高齢化が進む理事会に少しずつでも若い人を迎え入れ、人材育成を行っていくことが最重要の課題で、現在一生懸命に取り組んでいるところです。いずれは若い人が主導で、私たちは後押しするだけで大丈夫という状態にしたいですね」と小塚理事長は語られます。実際に小塚理事長たちの熱心な呼びかけにより、若手の役員は着実に増えているそうです。また、中止になっていた「わっしょい!!八幡山」が2022年(令和4年)1月に再開されるなど、今後の展開が楽しみでならない八幡山商福会。八幡山という街にとどまることなく、京王線沿線までも元気にする商店街として、これからも目が離せません。

いよいよ再開される「わっしょい!!八幡山」ののぼり旗がはためく赤堤通り。例年より3カ月遅れの開催であることから、今回は「特番 わっしょい!!八幡山」となっています。
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