TOKYOの商店街で開業したい人必見!
こんな商店街・あんな商店街の
魅力発信コンテンツ
VOL. 50

築地場外市場商店街振興組合 編
中央卸売市場と一体となって「都民の台所」の役割を担ってきた商店街

新大橋通りと晴海通りが重なり合う築地四丁目交差点の南西に、海産物を中心とした約400軒もの小売店、飲食店などがひしめく一角があります。それが「築地場外市場」。1935年(昭和10年)に中央卸売市場が築地で開業したころから、築地場外市場は中央卸売市場とともに「都民の台所」としての役割を担ってきました。

ところが2018年(平成30年)に中央卸売市場が豊洲へ移転することになります。その後も変わらず両市場は連携を保っていますが、場所が離れてしまったことは事実。このことで築地という街のにぎわいが失われてはいけないとの思いから、近年、築地場外市場ではさまざまな取り組みを行っています。今回は、それらの取り組みの中心となって精力的に活動されている、築地場外市場商店街振興組合の鈴木章夫理事長にお話をお伺いしました。

  • 築地本願寺のほうから築地四丁目交差点を渡ると見える大きな看板。ここから先は活気あふれる商店街です。
  • 初競りで高額落札したマグロの解体ショーが行われることでも有名な「すしざんまい本店」。
  • ご自身のお店である鶏肉専門店「鳥藤」の前に立つ鈴木理事長。「鳥藤」は1907年(明治40年)創業の老舗です。
イベントの開催と接客の意識改革で、築地の魅力を一般のお客様にアピール

築地場外市場は、中央卸売市場に付随している業務用の市場でありながら、一般のお客様もお買い物ができる商店街でもあります。しかし、その特長が一般のお客様にはっきりと認知されたのは、ほんの十数年ほど前からと意外に最近のことでした。それまで一般のお客様は、ここでは年末しかお買い物ができないと思っていたのです。そのため、年末は毎年ものすごい人出となっていました。

築地場外市場としては、一般のお客様にもっと来ていただくために、いろいろなイベントを積極的に開催。また同時に商店街の内部では、より多くのお客様を迎え入れるために、接客の意識改革を行いました。リーズナブルな品物ばかり並べているスーパーマーケットなどと違い、お買い得品もあれば超高級品まで取り扱う築地では、お客様がお買い物をしやすい売り方が必要になります。そこで、お客様がどんな価格帯のものを求めているか見極めること、お客様がつくりたいお料理に合わせて最適なものをおすすめすることなど、お客様への親身の対応を商店街全体に浸透させたのです。もともと築地場外市場で働く人は、ふだんから本職の料理人にも食材選びのアドバイスをしている、いわば「食のプロ」。このような接客の意識改革は、築地でのお買い物に「食のプロからアドバイスが受けられる」という付加価値を生み出すことにつながりました。

迫力のある年末セールのポスター。築地場外市場では、このようなイベントが頻繁に行われています。
成長著しい若手の活躍が、商店街全体のレベルを引き上げていく力に

築地場外市場には明治から続く老舗も珍しくなく、店主が4代目、5代目というお店も少なくありません。後継者が非常にうまくつながっている状況にあり、若手がどんどん育っているといいます。しかも、みんな商売のライバルでお互いに競争心を持っており、さらには年配者までもが若手に負けまいと頑張る傾向があって、結果的に商店街全体のレベルが高まっているそうです。

このような背景から若手主導による取り組みも多く、その代表的なものの一つが10年ほど前から力を入れている通販事業。築地が誇る食のプロが目利きした、さまざまな厳選食材を取りそろえた通販サイト「築地お取り寄せ市場」はスタート時より好評を得ていましたが、図らずも昨年あたりからたいへん大きな成果を挙げることになります。飲食店への納入業者として成り立っている築地場外市場は、今回のコロナ禍により飲食店からの注文が激減。さらに一般のお客様の足も遠のき、大きな打撃を受けていました。そのような危機的状況下で、この通販事業に限ってはコロナ禍で高まった巣ごもり消費のニーズに合致し、売り上げが飛躍的に向上。築地場外市場の勢いを保ったのです。

「築地お取り寄せ市場」のトップページ。おいしそうな旬の食材の写真が食欲をそそります。検索性も抜群です。
築地で一本立ちできる商店街になるための挑戦は、まだ始まったばかり

中央卸売市場の移転に伴い、築地場外市場が大いに頭を悩ませたことに、築地から魚河岸がなくなってしまうという問題がありました。なんとかしなければ、これまでどおり新鮮でおいしい魚を求めて築地にやってくるお客様のニーズに応えられません。検討の末、問題の打開策として計画されたのが「築地魚河岸」の建設でした。これは、豊洲に行ってしまうお店に、築地で支店を出してもらうための施設。実はこの計画、中央区の多大な支援によって実現したのだそうです。築地場外市場の取り組みには、中央区も大きな期待を寄せていることが伺えます。

鈴木理事長をはじめとする築地場外市場の人々の並々ならぬ努力によって、今も築地は活気に満ちあふれています。しかし、中央卸売市場が移転してまだ3年しか経過していないからという見方ができることも確か。鈴木理事長は築地場外市場の今後について「これからも豊洲の中央卸売市場と共存共栄を図っていくことに変わりはありませんが、最終的には築地場外市場だけで一本立ちできるようになることが目標です。そのためにはイベントの開催や接客の意識改革などの取り組みを継続し、さらに発展させ、業務用の市場としても、一般のお客様を迎え入れる商店街としても、よりいっそう高いレベルに行かなくてはなりません。長く険しい道のりかもしれませんが、きっとたどり着けると信じています」と力強く語られました。その言葉から伝わってくるのは、築地場外市場の挑戦はまだまだこれからが本番ということ。築地場外市場の未来、そして築地という街の未来に、期待は高まるばかりです。

「築地魚河岸」は2016年(平成28年)に開業しました。生鮮市場のほか、フードコートもオープン。憩いの場となっている屋上広場では、バーベキューなどのイベントも開催されています。
近隣の空き店舗を探す