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VOL. 49

エスプラナード赤坂商店街振興組合 編
都内屈指のハイセンスな街の商店街に誕生した、日本初の女性理事長

東京都港区の北東に位置する赤坂は、国会議事堂など、主要な官公庁のある永田町に隣接し、テレビ局や複合施設などの大型ビルが数多く立ち並ぶ、都内屈指のハイセンスな街。一方、アメリカ大使館をはじめとした外国大使館や海外の要人を迎える高級ホテルが多いことから、国際的にも注目を集める街です。そんな赤坂にアクセスする、東京メトロの「赤坂見附」駅、「赤坂」駅からすぐのところにあるおしゃれな商店街が「エスプラナード赤坂」。エスプラナード赤坂通りに沿って全長約650メートルに渡り、飲食店を中心とした約90店舗が軒を連ねています。

この商店街を指揮するのが、城所ひとみ理事長。城所理事長がこのポストに就かれたのは1990年(平成2年)のことでした。当時、法人化された商店街の女性理事長は日本でたった一人だったそうです。今回は、城所理事長が女性ならではの視点でこれまでに進めてきた、商店街を起点とする街づくりの取り組みについて語っていただきました。

  • 東京メトロ丸ノ内線「赤坂見附」駅の赤坂見附方面改札から地上に出れば、エスプラナード赤坂はすぐ目の前です。
  • 街路灯の柱に、瀟洒な雰囲気の文字で入れられた商店街名。「エスプラナード」とは英語で「貴族の散歩道・高貴な避暑地の遊歩道」という意味です。
  • 興味深いお話をたくさん聞かせてくださった城所理事長。唎酒師としての顔も持ち、日本酒関連の活動にも精力的に取り組んでいらっしゃいます。
道路整備を機に、より華やかな表情の商店街に生まれ変わった

城所理事長が最初に手がけることになった大仕事が、電線埋設と電柱撤去の工事を伴う道路整備でした。いざ工事が始まれば通行止めになるなど、お店の営業が妨げられる事態も考えられ、事前にビルオーナーやテナントの責任者たちに理解を求めて、工事承諾書に判を押してもらわなければなりません。訪問しなくてはならない人数は、500人ほどにも上りました。中には交渉が難しいようなところもありましたが、城所理事長はしっかりと筋を通した対応をされて、通常であれば3年はかかるといわれることを、わずか3カ月ほどで完了してしまったのです。

さらに城所理事長は工事の際に、お店の前に歩道を設けることにこだわりました。実はそれまで商店街のお店は車道に直接面しており、ほとんどが飲食店ということもあって衛生上の理由などから、間口を閉め切っていたのです。ところが、城所理事長の希望どおり歩道が整備されてからというもの、お店はこぞって間口をオープンにして、歩道の前までテーブルを出すようになります。外国人観光客やOLなど、いろいろな人々が店先でくつろぐ姿が見られるようになり、エスプラナード赤坂はより華やかな表情の商店街に生まれ変わりました。

電線埋設と電柱撤去によって地上に設置される、配電盤や変圧器などを収容したピラーボックスには、赤坂の街にふさわしいおしゃれなイラストが描かれています。中にはブラックライトが仕込まれていて、夜には夜らしい絵柄(右)に変わり、道ゆく人々の目を楽しませています。
マイナスをプラスに転じた発想力と行動力、そして女性ならではの感性

赤坂は世界的な大都市、東京の中にあってもひときわ洗練されたイメージの街ですが、一時期、ある不名誉な称号が与えられていました。それは「違法駐車の多い街」。実は赤坂は、ある雑誌のランキングでもワーストワンに選ばれるほど、車であふれた街だったのです。その原因は至ってシンプルで、そもそも駐車場が少なかったこと。この問題を解決するには駐車場を増やせばいいだけなのですが、赤坂のような都心の一等地ではそう簡単に土地を確保できません。

何かしらの対策を講じなければならなかったとき、城所理事長の耳に入ったのが、広大な地下空間の存在。そのころ赤坂では、ライフラインの主要な幹線を収容する施設である共同溝の工事が行われており、その資材置き場として使用されていた地下空間があったのです。本来であれば作業終了後に原状回復されるこの地下空間を「駐車場として利用できないか?」と考えた城所理事長。早速、その旨を建設省(現・国土交通省)に申し出ました。熱心な交渉の末、城所理事長の申し出は承認され、問題の解決に向けて大きく前進することになったのです。

しかし、地下空間を実際に駐車場として稼働させるには、人が移動するための通路が必要になります。そこで地下歩道も整備することになったのですが、ここに城所理事長の女性ならではの感性による一工夫が加えられました。地下歩道の天井面は、昼間は何の変哲もない白いものですが、夜になるとブラックライトが照射され、幻想的なビジュアルが浮かび上がるのです。この地下歩道のブラックライトアートは、地下駐車場から赤坂の街への導入にふさわしい素敵な演出になりました。

120メートルほども続く地下歩道のブラックライトアート。エスプラナード赤坂のイベントの一環としても利用されています。
繁華街でもありオフィス街でもある赤坂を、もっとワクワクする街へ

赤坂は夜の繁華街、昼のオフィス街と二つの顔を持つ街。繁華街である夜のうちに出たゴミが路上に散乱しているようでは、朝、出勤してくる人たちを迎えられないとの思いから、城所理事長はゴミ回収の最善策を模索していました。商店街での一斉回収がベストでしたが、コストが抑えられなければお店からの賛同は得られません。そこで、産廃ゴミをすべてリサイクルするシステムを整えた会社と提携し、独自の処理ルートを用意することでコストの問題を解決。商店街の会員に限り、ゴミを毎日回収することになりました。朝5時ごろから、契約しているゴミ回収業者がビルの中まで取りに来るので、ゴミが路上に放置されることはありません。この取り組みはテレビの取材を受けて「朝、カラスが一羽もいない通り」として紹介されました。

このような城所理事長の奮闘を原動力として、訪れる人をワクワクさせる魅力を増してきた赤坂。「赤坂は大人の街、本物志向の街であることを根本として、そのうえでおしゃれな街であることを理想としてきました。今は以前と比べてかなり理想に近づいてきたと思いますが、街は生き物。時代とともに変わります。だから、私の街づくりはまだまだING…現在進行形なんです」と城所理事長はおっしゃいます。決して現状に甘んじることのない城所理事長のような存在があれば、赤坂はこれからももっとワクワクする街へと進化を続けていくことでしょう。

城所理事長の活躍のエピソードは、書籍化もされています。
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