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VOL. 43

商店街リノベーション支援事業編 第1回永山団地名店会
写真提供 hifumi studio

東京都では、集客力が低下している商店街に対し、専門家の派遣によって活性化を促す「商店街リノベーション支援事業」を実施しています。

今回から3回に渡り「商店街リノベーション支援事業」編として、令和元年度から3年間支援対象商店街となった、多摩市の多摩ニュータウン※内にある永山団地名店会、多摩諏訪名店会、豊ヶ丘・貝取商店会をピックアップ。各商店街の概要や事業内容についてお伝えしていきます。

※ 多摩ニュータウン:多摩市、八王子市、町田市、稲城市にまたがっている。1965年に都市計画が決定し、2006年まで約40年開発が続けられた。近隣住区論(クラレンス・A.ペリーが提唱した、小学校を中心とした徒歩圏内に住居や生活必需施設を配置するという考え)を基本理念とし、安全性と商業地や公園・緑がセットになった街並みが特徴。駅やそれぞれの団地へ歩行者や自転車が通行可能なペデストリアンデッキで行き来できる。自動車とすれ違うことはない。

この3商店会は、連名で本事業に申請。それぞれ団地の入居開始時期と同タイミングとなる約40~50年前に結成されており、空き店舗や店舗の事務所化、作業場化による賑わいの減衰が長年の問題点となっていました。

第1回目では、「永山団地名店会」をご紹介。新田孝会長、猪俣渚さん、そして専門家として採択された建築家の横溝惇さんにお話しを伺いました。

  • 今回お話をお伺いした、新田孝会長(右)、猪俣渚さん(左)。
  • 建築家の横溝惇さん。ご自身は、多摩ニュータウン内の落合商店街に設計事務所兼店舗を構えていらっしゃいます。
  • 永山団地の1階に位置する永山商店街。
団地内に位置する商店街

永山団地名店街は、永山団地の高層賃貸住宅1階に位置するアーケード付き商店街。永山団地の入居が始まった1971年にオープンし、2021年に50年を迎えます。
当初は生鮮三品をはじめ、金物店、書籍・文具など生活最寄品が並ぶ商店街で活気もあったそうですが、徐々に衰退。オープン当初からある店舗は代替わりした美容室、床屋が残るのみとなり、29戸のうち多くには福祉関連の施設が入居しています。高層賃貸住宅の1階とは別の場所になりますが、スーパーマーケットを有しているのも特徴です。

永山団地の敷地内にあるスーパーマーケット。写真右に見えるのは永山南公園(約21,714㎡)で、イベント会場としても使われています。
高齢者だけに目を向けず、大学生や子どもたちが活躍できる場としてもあり続けたい

「入居した年にあたる1971年は小田急永山駅や京王永山駅がまだできていなくて、聖蹟桜ヶ丘駅までバスに乗り、そこから職場のある目黒駅まで通っていました」と入居当時を振り返ってくださった新田会長。敷地内は今のような緑が多い風景ではなく、砂地が広がっていたそうです。30歳で市議会議員になられてからは、地域の共働き世帯を支援するために、保育園の新設などに尽力されてきました。
「入居時は若い世代が多かったですが、50年が経ち、65歳以上が約34%を占めるようになってしまいました。商店街のテナントは入居者のニーズに合致するような、福祉施設や高齢者が集える場所が多くなっています」とのこと。
一方で、昨年は東京造形大学写真専攻の学生が主催する『ニュータウンと里山』という写真展の開催場所として一角を提供。被写体として永山商店街や団地を選んだ学生も多かったらしく、住民には分からなかった魅力を再発見することができたそう。また、「子どもたちにもっと利用してもらえる商店街になれたら」と新田会長。コロナ禍が落ち着いたら、子どもが店主となるバサーを開催したいとも語ってくださいました。

店頭に椅子やテーブルが並ぶアーケード内。住民憩いの場としても機能しています。
活発に意見を交わし、いろいろなことを考えていきたいです

「これまでは、さまざまなイベントをやってきました」と猪俣さん。「5月のさつき祭りにはじまり、7月は夏まつり、10月は秋祭り(焼きサンマ1,000匹を振る舞うイベント)、12月は歳末感謝祭と、イベントの準備と実施に追われる1年でしたね。昨年はコロナ禍で従来のイベントができませんでしたが、じっくり考える時間ができたという点ではプラスになりました」とのこと。時間を見つけては商店街のメンバーと横溝さんが集まり、意見交換をしていらっしゃるのだそうです。「リモートもいいけれど、感染対策をしながら同じ場所に集まり、その場の空気や雰囲気を感じながら話しています。思いもよらない斬新なアイデアも生まれることもあります」と明かしてくださいました。
コロナ禍で例年の動きが取れなかった2020年。横溝さんや仲間のクリエイターの発案で、商店街を活用したワークショップを開催したそうです。「約200mに渡って、商店が並んでいるのが永山商店街の特徴です。100mの布を設置し、そこに絵を描くという子ども向けのワークショップを開きました。密を避けるために予約制にしたところ、あっという間に埋まってしまって…。当日やりたそうにしている子どもたちを見て、心苦しかったです」と横溝さん。

取材当日は、“50周年記念に何をやるか”というテーマで活発に意見が飛び交っていました。高齢化と向き合いながらも、できること、面白いことをやり続け、若い人たちがここで働きたい!と感じてくれるよう魅力を創出していきたいという皆さん。これからも思いを強く持って取り組んでいかれるそうです。

ワークショップの様子 写真提供 hifumi studio
ワークショップで完成した絵 写真提供 hifumi studio
全身を使って、ダイナミックに絵を描く子どもたち。カラフルで自由な作品に仕上がりました。
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