2015年8月にオープンした「KAIDO books&coffee」は、街道や旅をコンセプトにしたカフェ。都のチャレンジマート事業の指定を受け、改装費と3年分の家賃は都と区から補助を受けています。空き店舗となった金物店の1・2階を改装した店内は、床面積が約100㎡あるゆったりとした造り。1階はカフェスペース、キッチン、本棚があり、2階は旅関連の古本などがぎっしり並ぶ本棚と大きなテーブルが並んでいます。10,000冊を超える蔵書は、地元古書店「街道文庫」の協力によるもので購入が可能。本棚の一角は有料で貸し出しており、旅をテーマにしたものの設置であれば利用できます。フロア自体もレンタルでき、地元住民のコミュニティースペースとして機能しています。
1階の手前部分はイベントスペースとしても提供。自治体や出版社などに開放し、旅や観光をテーマとしたイベントを開催しています。今までに長野県飯田市、岡山県倉敷市、滋賀県長浜市などの活用実績があります。

【KAIDO books&coffee】
住所：品川区北品川2-3-7 丸屋ビル1F
電話：03-6433-0906／URL：http://kaido.tokyo/／営業時間：11時30分縲鰀20時(平日)、11時30分縲鰀19時(土・日・祝)※ペット入店可、フリーWi-Fi

地元のイラストレーターに書いてもらったというカフェスペースの壁画。旅や人生をテーマとしており、ポップなタッチが店内のアクセントになっている。

ほとんどの書籍は2階のフロアに。1点ものや絶版したものが多く、見ているだけでワクワクする。テーブルは長野県飯田市より貸与された樹齢3,000年を超えるヒノキ製のもの。

キッチン前のスペースには、民間で作られた日本初の耐火煉瓦「品川白煉瓦」が敷かれている。以前工場が近隣にあったという縁で、“品川の地域拠点にぜひ”ということで無償で提供してもらったとのこと。

「KAIDO books&coffee」の店主佐藤さんは地元出身。2010年に独立して(株)しながわ街づくり計画を起業されました。もともと広告代理店に勤務しており、そこで培ったエリアプロモーションのスキルを使って、地元に密着した広告代理店として品川の活性化に寄与しています。
当初は街が賑わえばという思いでイベント事業などを積極的に進めていたそうですが、「商店街を見回すと、シャッターが閉まったままの店や店舗を取り壊してマンションになってしまったところなどあり、時代の流れには逆らえないことに気付きました」とのこと。毎月開催されていた伝統的なお祭りも、その運営を担う店主の数が減少傾向にあるため継続が難しく、このままでは品川の歴史が後世に伝えられなくなってしまうと危惧されたこともあったのだそうです。

こんな状況でも自分に何かできないかと考えていたところ、仲間と「自分たちが行きたくなるような、コミュニティを育むお店をこの街にも作ろう」となり、カフェをオープン。毎日同じ時間に来店し、お気に入りのソファで過ごす常連客、おしゃべりをしにやってくる近所のご婦人、近隣で働くOLなど来店層はさまざまですが、オープンから2年半の時を経て、確実に地元に根付いたお店となっています。

地方自治体の職員が、空き店舗対策の事例視察としてお店を訪れることもあるそうで、その際は佐藤さんがエリアプロモーションについてなどをテーマに講演を行うことも。品川の歴史をつづった書籍やタウン誌も置かれており、品川の情報発信拠点としての役割も果たしています。
「将来の夢は、品川を盛り上げる事業も行いながら、旧東海道沿いに支店を構えること」と佐藤さん。それぞれの地域で求められている店舗を作り、活性化につなげたいのだそう。若き経営者のこれからに期待が高まります。