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VOL. 71

富士見通り商栄会編
富士見通り商栄会
軍事工場の建設がきっかけで街が形成。その場所に誕生した商店街

西武拝島線「東大和市」駅より徒歩約7分。678メートルの沿道に商店が連なるのが富士見通り商栄会です。古くから営業しているお店、新しく開業したお店などが入り混じる商店街で、主に個人商店が営業しています。
ここは「南街」(なんがい)というエリア。1938年(昭和13年)に軍用機のエンジンを製造する大きな軍事工場が建設された場所で、そこで働くために1万人以上の人たちが一気に移住し、多くの人でにぎわいを見せるようになりました。戦争で軍事工場が空襲を受けて壊滅状態になりましたが、戦後は沿道の社宅に住む人たちが商売を始めるようになって、徐々に商店街が形成されていったということです。今でも軍事工場の厚生施設だった床屋さん(理容西川)、お風呂屋さん(富士見湯健康セントー)が営業を続けています。
今回は、第18回東京商店街グランプリのノミネート事業となっている、ネコとアートをテーマにした「富士見通り『にゃんがいい』アートプロジェクト2022」について、富士見通り商栄会の西川会長、アート作品を提供した武蔵野美術大学の田中里奈さん、安川由華さんにお話を伺いました。

  • 富士見通り商栄会
    軍事工場の厚生施設から続く、西川会長のお店「理容西川」。シャッターアートの作品名は「にゃん・ザ・スカイ」
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    アフターサービスからメンテナンスまでしてもらえるという「マルヤ靴店」の店頭で存在感を放つ「dancing cat」とオーナー様。
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    東大和市立第二小学校の南東角にある「ポケットパーク」。花壇の側面にもかわいいネコの作品が。
高齢化や生活スタイルの変化によって変わっていく商店街

最盛期には、80店以上が営業していたという富士見通り商栄会。生鮮三品を扱うお店や洋品店、電機店、お米屋さんなど、生活に必要なものがそろえられる店舗が並び、近隣住民にとってなくてはならない存在でした。しかし、近年は店主の高齢化、生活スタイルの変化などからその店舗数は減少しています。昨年末には、東大和市内に唯一あったレコード店が閉店。1967年から50年以上続けてきた歴史に幕を閉じたそうです。「1階が店舗、2階が住居という、店舗部分のみを貸し出すということができない造りというのもあって、お店を閉めると空き店舗状態になっていたり、丸ごと住宅として建て替えたりしているところが多いです」と、商店街の現状を語ってくださった西川会長。そのような中、商店会のメンバーで活性化補助金を使ってできることを考えていたところ、ファシリテーターの方からの提案でアートイベントを開催することを決められたのだそうです。

富士見通り商栄会
南街交番から続く商店街。歩いているとたくさんのネコアートに出会えます。
武蔵野美術大学の学生と店舗がアートイベントを共同開催

「ファシリテーターの方が、武蔵野美術大学の講師ということもあって、武蔵野美術大学の学生に募集をかけて、ネコをテーマにしたペイントや造形物などのアートを店頭などに飾ることにしました。ネコをテーマにしたのは、商店街のキャラクターがネコだったからなんです。『にゃんがいい』アートプロジェクトの『にゃんがいい』は、南街が転じたもの。募集後、zoom説明会を実施しましたが、最初に70人ぐらいの学生さんが興味を持ってくださってびっくりしました」と西川会長。その後、講義などの都合で人数が絞り込まれ、最終的には25人の学生と16店舗が協力し、アートイベントを開催することになったとのこと。イベントは、2022年(令和4年)12月22日(木)~2023年(令和5年)1月20日(金)まで開催されましたが、初日には商店街店舗巡りツアー、学生によるアート解説1DAYイベントなどを行ったそうです。

富士見通り商栄会
大学生を募集した際のチラシ。右上にいるのが商店街のキャラクターです。
人が行き交う商店街に、自分の作品があるという喜び

今回の取材では、武蔵野美術大学の学生にもお話をお聞きすることができました。田中さん、安川さんは高校の美術部時代からのお仲間。昨年4年生だった、こちらも高校時代からの先輩である山本莉世さんに誘われたこと、ネコが大好きなことがきっかけでイベントへの参加を決めたのだそうです。「11月末が締切で、8月からイメージを作り出し、9月の初旬から制作を始めました。私たちは富士見湯健康セントーの担当で、『トリックアートにして欲しい』というご要望をいただいていました。浴室内に飾るということで、作品は大きめ。作業場所の確保に困っていたところ銭湯の2階を作業スペースとして開放してくださったんです。大学からは自転車で移動し、週2~3回通ってどうにか仕上げることができました」など、制作過程などを振り返ってくださいました。今回の感想を伺うと、「夜の作業になるとお腹が空くので、商店街にある肉の越木屋さんでお惣菜を買ってみんなで食べて・・・というのが何だかとても楽しかったです。後日、富士見湯健康セントーで私の絵を見かけた友人から『りなちゃんの絵が飾ってあったね』と言われたんです。友人に限らず、私の絵をこうやって見ている人がいるのだなとうれしくなりました」と田中さん。一方安川さんは、「楽しいプロジェクトでした。場所の提供や素敵なパンフレットを用意してくださったこと。学生の私たちにとってはとてもありがたいことでした。商店街の皆さんと交流できたのは大きかったですね。たくさんの方が見てくれているんだなと、うれしい気持ちになりました」と笑顔で話してくださいました。

富士見通り商栄会
「作業が終わると、銭湯に入って帰ることもありました」とお二人。
どれだけの人に出会えたかは人生の価値になると思います

今回の感想や今後について西川会長にお聞きしたところ、「今回のイベントの反省点は、学生同士の交流の橋渡しがあまりできなかったということです。制作はそれぞれの場所で行っていたので、相互の交流があまりはかれていませんでした。どれだけの人に出会えたかは人生の価値になると思っていますので、これから学生とイベントをやる際には、交流という部分も考えていきたいですね。それから、商店街でイベントをやるにはマンパワーが必要ですが、この商店街にはそれが足りません。そこが課題ではありますが、自身は東大和市商工会青年部や商店街の活動でたくさんの人に会うことを続けていって、何かにつなげていきたいと思います」と力強く語ってくださいました。

富士見通り商栄会
パンフレットはマップ付きで普段でも利用しやすい紙面です。
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