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こんな商店街・あんな商店街の
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VOL. 59

三鷹商工会/三鷹市商店会連合会 編
水と緑に恵まれた「公園都市」、三鷹市の全商店街にDXで新風を吹き込む

東京都の西側に広がる多摩地域。その東端に位置する三鷹市は、井の頭恩賜公園、野川公園などを有する水と緑に恵まれた「公園都市」です。また、自然が豊かであるだけでなく都心へのアクセスも良好。たいへん快適な住環境が整うこの市には、約7万世帯が暮らしています。
そんな三鷹市にはかつて市内全域に40を超える商店街が点在し、それぞれの地域でにぎわいを見せていました。しかし、現在ではその数が28にまで減少しています。その大きな原因としては、商店街の加盟店の事業承継が思うように進まないことに加え、それぞれの店舗の強みを結集して地域に発信するという商店街が従来持っていた機能が失われつつあることが考えられました。
そこで、市内の商店街が加盟する三鷹市商店会連合会、そして同会と連携する三鷹商工会では、現状を打破するためにDXを活用した取り組みに着手。今回は、この取り組みを主導している三鷹商工会の岩崎守利会長から詳しいお話をお伺いしました。

  • 三鷹駅南口。三鷹駅は駅の真下に行政区画の境界線が走っているたいへん珍しい駅で、こちらを出ると三鷹市ですが、北口を出ると武蔵野市になります。
  • 岩崎会長が経営する、こだわりの蕎麦と和食が評判の「季寄せ 蕎麦 柏や」。1930年(昭和5年)創業の老舗で、岩崎会長は3代目の店主です。
  • 2017年(平成29年)より三鷹商工会の会長に就任されている岩崎会長。かつては三鷹市役所に勤務されていたこともある方です。
三鷹の「いいね!」に出会えるアプリ、「ミィね!mitaka」が誕生

三鷹商工会では、商店街がどんどん減っていくことへの対策はもちろん、加盟していた商店街がなくなっても頑張って営業しているお店を引き続き支援できる仕組みづくりも急務と考えていました。そこで着目したのが、観光地で情報提供や見どころガイドなどに利用されていた観光アプリ。これを商店街の情報発信や集客のためのツールに転用し、三鷹市全域を一つの商店街とするプラットフォームが構築できれば、現在直面している課題の解決につながると考えました。
このような経緯で三鷹商工会はアプリの導入を決定し、2021年(令和3年)7月に開発を開始します。その年の暮れに行われるイベントでの使用を目指し、開発は急ピッチで進められました。また、岩崎会長たちには開発と同時に進めなくてはならない、もう一つの大きな仕事がありました。それは、それぞれの商店街からアプリに対するご理解を得て、登録店舗を増やすこと。実は三鷹市の商店街はキャッシュレス決済もそれほど普及しているほうではなく、お店にご賛同いただくのはなかなかたいへんで、岩崎会長たちは説明のために日々三鷹市内を奔走しました。
このような岩崎会長たちの奮闘努力の末、520店舗以上の登録を集めたアプリが、2021年(令和3年)11月、無事に運用をスタート。名称は、三鷹の「いいね!」に出会えるアプリという意味を込めて「ミィね!mitaka」に決まりました。

「ミィね!mitaka」の商店街紹介画面。左下にいるのは、三鷹商工会のキャラクター、「みののん」です。
充実した機能でさまざまな商店街の活動を支え、集客力や回遊性を向上

「ミィね!mitaka」は、三鷹市内の商店街の情報と加盟店の連絡先やホームページのURLなどを地図情報とともに表示。そして、アプリ利用者のスマートフォンのGPSやビーコン機能を活用することで、加盟店のおすすめ商品やセール情報などをプッシュ通知でタイムリーに配信します。また、周辺の観光スポットの情報を発信することで地域の魅力もアピール。さらに、スタンプラリー機能を備えているほか、コロナ禍が去ったあとに訪れるであろうインバウンド需要を見据えて、英語、中国語、韓国語などの外国語にも対応可能となっています。
そんな「ミィね!mitaka」は当初予定されていたとおり、2021年(令和3年)12月から2022年(令和4年)1月にかけて、FC東京とのコラボレーションによって実施された「市内一斉歳末セール みたか周遊商店街スタンプラリー」で利用されました。たくさんの人に使われることで大きな反響を呼びましたが、一方で今後の改良点も見えてきました。この結果を受けて岩崎会長は「アプリはできるまでよりもできてからのほうが重要。これからも試行錯誤を繰り返し、その都度グレードアップさせていきます」と前向きです。

「ミィね!mitaka」の画面上でも告知された「市内一斉歳末セール みたか周遊商店街スタンプラリー」。スタンプを集めて応募すると抽選でゲットできるプレゼントには、FC東京が公式戦で使用した試合球などが用意されました。
商店街という枠を越え、さまざまな事業をつなぐ三鷹市のポータルアプリへ

今後も三鷹市では、デジタル商品券を景品としたスタンプラリーなど、「ミィね!mitaka」が活躍するイベントがどんどん企画されています。また、三鷹市の商店街はほとんどが他の市と接した場所にあるので、行政区画の境界線を越えた商圏単位のイベントで活用していくことも検討されています。
岩崎会長に「ミィね!mitaka」のこれからの展望についてお伺いすると、「このアプリの強みは何といってもいろいろなものを集積していけるプラットフォームアプリであること。つまり、このアプリの中で加盟している商店街のアプリが起動するということはもちろん、商店街という枠を越え、三鷹市のレンタサイクルや地域通貨などの利用管理という範囲までカバーした、三鷹市全体のポータルアプリとして進化させていきたいと考えています」と語ってくださいました。今後、三鷹市のあらゆることを包括していきそうな「ミィね!mitaka」。事業をつなぎ、人をつなぎ、ますます大きくなるその可能性に期待はふくらむばかりです。

「ミィね!mitaka」の誕生をお知らせするポスター。「みののん」がダウンロードを呼びかけています。
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