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VOL. 58

六本木商店街振興組合 編
六本木のアートとデザイン、そして独自性、新規性、国際性を数々の活動で発信

「六本木ヒルズ」「東京ミッドタウン」といった全国的にも有名な大型複合施設がそびえ立ち、ハイセンスなバーやレストランが軒を連ね、多くの外国人が行き交う六本木。一種独特な雰囲気を漂わせるこの街は、常に日本のトレンドをリードしています。
また一方、人気の美術館が集積し、文化的な香りも高い六本木では、「アートとデザインのまち」をコンセプトとした街づくりの活動が積極的に行われてきました。この取り組みを主導してきたのが、六本木交差点を中心に外苑東通りを軸として広がる「六本木商店街振興組合」です。この商店街では近年、アートとデザインに独自性、新規性、国際性という要素も加え、さまざまな活動を通して六本木の魅力を発信。この街のファン、そしてリピーターを増やしてきました。現在も、AIを搭載した「スマート街路灯」によって街の情報を効果的に収集・発信する取り組みは、大きな話題となっています。
今回はこの取り組みを陣頭に立って指揮している臼井浩之理事長と原田隆子理事から、これまでの経緯とこれからの展望についてお話をお伺いしました。

  • 外苑東通り。この道を軸として広がる六本木商店街振興組合では、飲食店をはじめとする多種多様な店舗が約200軒も営業しています。
  • 六本木交差点に静かに佇むブロンズ像「奏でる乙女」。製作者の本郷新氏は、戦後の日本における具象彫刻作家の代表的存在です。 六本木には、このような街角で出会えるアートもたくさんあります。
  • 六本木交差点に立つ臼井理事長(写真右)と原田理事(写真左)。背景に見える首都高速道路壁面の「ROPPONGI」は、六本木商店街振興組合のロゴです。
難問に直面しながらも決してあきらめずに推進した、人流の見える化

数多くのオフィスビルやタワーマンションが立ち並ぶ六本木には、繁華街はもちろん、ビジネス街、そして住宅街としての顔もあります。このような特性から、街を訪れる人は実に多種多様。そこで六本木商店街振興組合では、お客様のさまざまなニーズに応える施策の策定には、「いつ、どのあたりを、どのような人が通行しているのか」などの人流に関するデータの取得が不可欠と考えました。そのためには、商店街の街路灯にカメラを取り付けて測定すればよいとなったのですが、この案は簡単には進められません。まず、道路占用規則で街路灯への取り付けが許されていたものは、特例的に認められていた防犯カメラだけだったのです。さらに、そのころ個人情報保護への意識も高まり、懸念事項となりました。
そこで、六本木商店街振興組合では、理事所有の3カ所のビルにカメラを取り付け、2017年(平成29年)から実証実験を開始。今まで感覚でしか捉えていなかった通行量や属性などが、はっきりしたデータとして収集できるというエビデンスをもとに、都の担当部署との協議・交渉を続けました。一方、個人情報保護の問題に関しては、カメラから得た通行人の性別、年代、数を瞬時に解析して数値化し、画像としては残さないというシステムとすることでクリア。これらの努力が実を結び、ようやく街路灯にカメラを取り付ける許可が下りたのです。しかし、六本木商店街振興組合によるスマート街路灯設置までの道のりはまだ続くのでした。

カメラは混雑度も測定し、ピクトグラムで表示します。このピクトグラムは、サインデザインの第一人者である廣村正彰氏が手がけたものです。
カメラとサイネージが連動する「スマート街路灯」が、街の新機能に

カメラで情報が収集できることになりましたが、次はそれを活かしてこちらから情報を発信していかなくてはなりません。六本木商店街振興組合ではそのためのツールとして、街路灯にサイネージを取り付けることを考案します。しかし、ここでもまた規制を受けることになりました。それまで街路灯に掲出することが認められていた広告物はフラッグのみ。サイネージは前例がなく、六本木商店街振興組合はまた都の担当部署と協議を重ねました。その結果、六本木のスマート街路灯は2019年度(令和元年度)、ついに最初の10基が設置されることになったのです。
その後、スマート街路灯は毎年増設され、2021年度(令和3年度)までに計33基となり、そのうちの4基にカメラ、10基にサイネージが取り付けられました。そして、六本木商店街振興組合ではこのスマート街路灯を利用して、2021年(令和3年)11月から2022年(令和4年)2月にかけて「六本木デジタルクーポンキャンペーン」を実施します。内容は、スマート街路灯のサイネージに表示される二次元バーコードをお客様がスマートフォンで読み取ると、それぞれの店舗で使えるデジタルクーポンが発行されるというもの。店舗の利用を促進し、商店街の回遊性を向上させるねらいがありましたが、コロナ禍という状況を配慮し、カメラで混雑度を把握して、過密な状況になってきたエリアでは、デジタルクーポンの発行をストップするという仕組みも取り入れました。臼井理事長は「カメラとサイネージを巧みに連動させたことが大きなポイントで、スマート街路灯のパフォーマンスに確かな手応えを感じることができました」とこのイベントの成果を評価します。

加盟店の紹介動画が流れるサイネージ。目を引く映像には思わず足が止まってしまいます。
先進的な取り組みに挑み続けることで、商店街の活動に新たな可能性を拓く

六本木商店街振興組合では、これからもスマート街路灯を増設していく予定で、イベントも「六本木デジタルクーポンキャンペーン」とはまた異なる趣向のものを企画中とのことです。原田理事に今後の目標について尋ねると「スマート街路灯は期待どおりの働きをしてくれていますが、その一方で課題もあります。それは、どんどん蓄積されていくデータの有効活用。現在、加盟店はこのデータを利用できるようになっていますが、将来的には社会で利活用できるような仕組みづくりを進めていきたいです」と答えてくださいました。
また、臼井理事長に六本木商店街振興組合としての活動のビジョンを伺うと「全国的に見ても、商店街を取り巻く環境は決して良好とはいえません。やはり現状を打開するための新たな一手が求められますが、新しいことを行おうとすると規制に引っ掛かることがあります。そのためにはどうしても行政との協議・交渉が必要。多くの官庁が集まる霞ヶ関や都庁のある新宿にもほど近い商店街として、規制緩和にご理解をいただけるように努力を続けていかなくてはならないと考えています」と話してくださいました。これからも先進的な取り組みにチャレンジしていく六本木商店街振興組合。この商店街のさらなる活躍によって、六本木は商店街の活動でも日本のトレンドをリードする街となっていくことでしょう。

デザイン:石井幹子&石井リーサ明理

スマート街路灯のデザインは、照明デザイナーの石井幹子氏とパリを拠点に世界で活躍する石井リーサ明理氏によるものです。「アートとデザインのまち」にふさわしいデザインとなっています。
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