TOKYOの商店街で開業したい人必見!
こんな商店街・あんな商店街の
魅力発信コンテンツ
VOL. 57

大隈通り商店会 編
早稲田大学と、近隣の商店街と手を取り合い、半世紀を超えて早稲田の街を活性化

早稲田大学のシンボル、大隈記念講堂から、東京に残る唯一の都電である都電荒川線の終点、早稲田駅に向かって約300メートル続く「大隈通り」。この道を中心に、飲食店をはじめとしたおよそ20軒の店舗がオープンしている商店街が「大隈通り商店会」です。1966年(昭和41年)4月に「早栄会商店部」から独立して発足後、早稲田の街で50年以上もの歴史を歩んできました。
現在も、事業合併しているお隣りの「早稲田商店会」と一緒に、また7商店街で構成される「早稲田大学周辺商店連合会」(W商連)として、早稲田大学との緊密な連携のもとにさまざまな活動を展開しています。近年では、商店街の次代を担う若い人たちに向けた、SNSやWeb会議システム、また独自に開発したアプリを使った先進的な取り組みで注目されています。今回は、これらの取り組みを若い力で牽引している安井浩和会長44歳と角幡陽平副会長43歳のお二人から、詳しいお話をお伺いしました。

  • 都電荒川線は三ノ輪橋~早稲田間の約12.2キロ、30停留場を運行しているノスタルジックな路面電車。愛称は「東京さくらトラム」です。沿線では季節ごとに桜やバラなどの美しい花が咲き、乗客の目を楽しませてくれます。
  • 角幡副会長が経営する油そば専門店「武蔵野アブラ学会 早稲田総本店」。濃厚で滋味深い秘伝ダレが特注の極太麺に絡む油そばが大人気で、いつもたくさんのお客様が詰めかけ、行列ができています。
  • 安井会長のお店「こだわり商店」の前に立つ安井会長(写真左)と角幡副会長(写真右)。「こだわり商店」は、安井会長が自らおいしいと思ったものだけを取りそろえた、産地直送主体のミニスーパーマーケットのようなお店です。
若い世代の入会に障壁となる無理・無駄を排除し、持続可能な商店街を目指す

まだお若く歳も近い安井会長と角幡副会長は、商店街のことについてよく話し合われているそうです。そして、愛着のある早稲田の街で、この商店街が末長く発展していくためには、若い人たちにどんどん入会してきてもらうことが不可欠という考えを共有していました。その観点から大隈通り商店会を分析してみると、イベントでは早稲田大学の学生たちとのコラボレーションがたいへん盛んなことや、早稲田・高田馬場エリアの地域通貨「アトム通貨」が利用できることなど、若い人たちを惹きつける魅力は十分。しかし一方で、若い人たちに敬遠されがちな無理・無駄、つまり煩雑かつ面倒な雑務が、商店街の円滑な活動の妨げとなっていました。
お二人はこの問題を一つずつ解決すべく、まずはこれまで安井会長たちが直接一軒一軒のお店を訪問していた商店街内の連絡業務を、LINEの利用によって効率化。次に、W商連で月1回行われていた対面による会議をZoomの会議に切り替えました。「当初は高齢の会員を中心に反対の声もあったのですが、実際に始めてみるとこれまでの負担が大幅に軽減されたので、今ではかつて反対していた会員にも喜ばれています」と安井会長は話します。

c・週ezuka Productions

2004年(平成16年)に誕生し、2022年(令和4年)で19年目を迎えた「アトム通貨」。10馬力(10円相当)、50馬力(50円相当)、100馬力(100円相当)、500馬力(500円相当)の4種類があります。デザインは毎年変わるのでコレクションの楽しみも十分です。
毎日のお買い物もイベントも、よりスマートに変えていく「ワセダクエスト」

また、このような無理・無駄は、商店街内のことに限らず、イベントにおいても存在していました。それは、スピードくじなど、紙ベースのイベントで生じる手作業。イベントが終了すると各店舗からスピードくじを回収し、集計し、区に提出するという作業は、事務局サイドにとって大きな負担となっていたのです。そこで、大隈通り商店会ではアプリの活用による省力化を検討。そして、二次元バーコードを使った商店街ポイントシステムの導入に乗り出しました。
このプロジェクトには、早稲田大学の環境学の准教授がアドバイザーとして参画。安井会長たちと活発に意見交換しながら開発が進められました。その結果、商店街マップやポイント、スタンプラリーなどの機能を装備したオリジナルのアプリが完成。そして「地域の宝探し」という意味を込めて「ワセダクエスト」と命名されました。

「こだわり商店」の店内に設置された読み取り機(写真左)と「ワセダクエスト」の画面(写真右)。お買い物の後、「ワセダクエスト」の画面に表示される二次元バーコードを読み取り機にかざすとポイントがゲットできます。このゲーム感覚にあふれた楽しい画面デザインは、角幡副会長が手がけたものだそうです。
日々蓄積されていくデータが、商店街にたくさんの人を呼び込むエネルギーに

「ワセダクエスト」の誕生からおよそ4カ月後、2022年(令和4年)の5月から6月にかけて、早速このアプリの真価が問われるイベントが開催されました。それは、早稲田大学の地域おこしサークルにより大隈通り商店会を会場として行われた「ワセダローカルフェスタ2022~食楽園ニホン」です。「ワセダクエスト」はこのイベントのスタンプラリーで使用されたのですが、その評価は上々。大きな反響を呼ぶことになりました。
角幡副会長はイベントを振り返り「今後の運用に向けて手応えが感じられた反面、使い勝手においていくつかの課題も見つかりました。このようなイベントを繰り返し、その都度改良してアプリとしての完成度を高めていくとともに、普及の拡大も進めていきたいです」と話します。また、安井会長にこれからの展望を伺うと「もともとは商店街の仕事を簡易化するために開発したアプリでしたが、お客様の年齢・性別などのデータ収集もできるので、マーケティングにも役立てられると期待しています。独自のデータベースを構築し、それが利用できることを商店街入会のメリットとして若い人たちにアピールしながら、お客様にもっと楽しんでいただけるサービスの提供にも活かしていきたいです」と答えてくださいました。「ワセダクエスト」が使われるたびに蓄積されていく貴重なデータ。それは若い人たち、そしてお客様、たくさんの人を大隈通り商店会に呼び込むエネルギーとなり、早稲田の街のにぎわいを次の時代へとつないでいくことでしょう。

「ワセダローカルフェスタ2022~食楽園ニホン」の模様。学生たちが、食を中心に地域の魅力を紹介するこのイベントで、「ワセダクエスト」はたくさんの方々に利用されました。
近隣の空き店舗を探す