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VOL. 55

まえさわ小町商店会 編
約3,000世帯が暮らす滝山団地とともに、半世紀を超えて発展してきた商店街

美しいけやき並木が続く滝山中央バス通りの両側、約300メートルのエリアに、バラエティーに富んだ飲食店、そして寝具店や美容室など、50軒近くの店舗がオープンしている「まえさわ小町商店会」。都心の北西、武蔵野台地のほぼ中央に位置し、豊かな自然に恵まれた東久留米市で昭和40年代に誕生したマンモス団地、滝山団地とともに50年以上もの歳月を歩んできた商店街です。
まえさわ小町商店会では「心のふれあう商店会」をキャッチフレーズとして、地元自治会や地域住民と一体となったイベント「滝山・前沢みんなの夏祭り」をはじめ、これまでにさまざまな活動を行ってきました。そして、2019年(令和元年)に迎えた50周年という大きな節目では、周辺環境の変化によって増えてきた新しいお客様をメインターゲットとした記念事業を展開。さらに、そこから派生したPRユニット「こまちーズ」事業は、現在でも大きな話題を提供しています。今回は、この商店街で事務局としての役割を担っている横井修さんに、これらの取り組みに関する詳しいお話をお伺いしました。

  • 1999年(平成11年)にこの装飾街路灯を設置することを記念し、商店街の愛称を公募したところ「まえさわ小町」と決定。これが現在の正式名称「まえさわ小町商店会」につながっています。それまでの正式名称は「滝山東商店会」でした。
  • 長い歴史を誇る寝具店「ふとんしばた」。実はこちらの先代のご主人こそ、この商店街をつくったといえる方で、昔も今もまえさわ小町商店会の中心的なお店です。
  • 横井さんは以前、この商店街で文房具店を経営されていた方。現在は、地域コミュニティー全般の活動を行っているNPO法人「東久留米ふれあいの街」の理事長を務めていらっしゃいます。
50周年の記念事業では、若い世代による主導で、若い世代への訴求を目指す

まえさわ小町商店会では、50周年の記念事業を行うにあたり一つの目標を立てました。それは若い世代へのアピール。実は近年、まえさわ小町商店会の周辺には新しいマンションが増えていたのですが、そこに暮らす若い人たちへのアピールが商店街の大きな課題となっていたのです。そこで、50周年の記念事業ではこの課題に真正面から向き合うため、商店街側も若い世代の会員を集めて臨みました。多くのアイデアを出し合い、活発に意見を交換した結果、一過性のイベントではなく、後々まで残る記念冊子を制作することに決定。しかも、巷にありがちな堅苦しいものではなく、写真中心でガイドブックとしても使用できるような、若い世代に受け入れられやすいものとすることにしました。このような経緯で発刊されたのが『まえこま』です。
さらに、ぜひ『まえこま』を手に商店街を歩いてもらいたいとの思いから、景品としてエコバッグを用意したスタンプラリーも実施。商店街では『まえこま』を手にお店を巡る若い家族連れの姿が見られるようになり、当初の目標をしっかりと達成できた手応えが感じられました。しかし、まだこれは、さらに大きな成果を得るまでの過程でしかなかったのです。

記念冊子の『まえこま』とスタンプラリーの景品のエコバッグ。『まえこま』のアルファベット表記は「ma eco ma」として、「mama」(主婦目線)の間に「eco」(環境意識)があることを表しています。実際にまえさわ小町商店会ではエコイベントも開催されており、エコバッグに付けられた缶バッジは2020年(令和2年)に行われた地域清掃の際の景品です。
PRユニット「こまちーズ」の活躍によって生み出された、より大きな成果

50周年の記念事業に積極的に携わっていた若い世代の会員たちの中でも、ひときわ熱心に取り組んでいる3人の女性がいました。それは「ふとんしばた」のkyokoさん、「くらしの雑貨とお昼ごはん ユメノキ」のyucoさん、「Boulangerie SAWANO」のyukinoさん。いろいろなアイデアや意見を出して、記念冊子やエコバッグなどの制作をリードしていた3人を、いつしかみんなが「こまちーズ」と呼び始めたのです。後に大きな反響を呼ぶことになる、まえさわ小町商店会のPRユニット「こまちーズ」は、このように極めて自然な流れで生まれたのでした。
その後、「こまちーズ」はSNSや地元メディアへの出演を通して商店会をアピール。さらにキャラクター化されて、商店街の最新情報を発信する動画「こまちーズNEWS」に登場するほか、LINEスタンプや缶バッジにもなりました。これらの活動の結果、まえさわ小町商店会に興味を持つ若い人たちがよりいっそう増加。50周年の記念事業に始まった、まえさわ小町商店会による若い世代へのアピールは、より大きな成果を生み出すに至ったのでした。

まえさわ小町商店会の最寄りのバス停「滝山団地入口」に立つ「こまちーズ」の3人。kyokoさん(写真左)が次女でしっかり担当、yucoさん(写真中央)が長女でひらめき(妄想)担当、yukinoさん(写真右)が三女でおしゃべり担当という設定で、並び方はいつもこのように決まっています。
「ゆる~く なが~く」をモットーに、いつも自然体でお客様を迎える商店街へ

まえさわ小町商店会によるPRユニット「こまちーズ」事業は、2021年(令和3年)11月に見事「第16回 東京商店街グランプリ」の特別賞を受賞。地元のケーブルテレビやFMラジオなどでも紹介されました。さらに「こまちーズ」関連の企画は、2022年(令和4年)の初めに実施されたカードラリーなど、受賞後もますます広がりを見せています。
50周年の記念事業、そしてPRユニット「こまちーズ」事業を振り返って横井さんは「若い人にもっとこの商店街をアピールするという当初の目標が達成できたうえに、記念事業を牽引した若い会員たちがそのまま役員として残ってくれて、商店街の雰囲気がとてもよくなりました」と満足そうに語ります。また、今後の展望について尋ねると「商店街の活動は無理をすると続かないので、無理のない程度で進めていきます。そんな自然体の商店街のほうが、お客様に気軽に来ていただけるのではないでしょうか」と答えてくださいました。横井さんのこの言葉は「こまちーズ」の3人が取材を受けた際によく話している「ゆる~く なが~く」というモットーと重なります。いつも自然体で和やかにお客様を迎え、そして笑顔にしてくれるまえさわ小町商店会。この商店街を中心として、滝山団地や新しいマンションが建つ近隣から、さらにより遠方の地域まで、これからも笑顔の輪が大きく広がっていくことでしょう。

2022年(令和4年)初めのカードラリーで使われた、各店舗の代表者の似顔絵入りオリジナルカード。「こまちーズ」のキャラクター化をヒントにして生まれた企画です。横井さんのもの(写真左上)もあり、似顔絵の上にある文字「良いですねー!」は横井さんの口癖とのこと。
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