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こんな商店街・あんな商店街の
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VOL. 42

品川区戸越銀座商店街連合会 編
震災や利便性の向上で商店が集積し、商店街が形成されていったエリア

かつては畑や竹林が広がっていたという戸越エリア。最寄り駅は徒歩で15分ほどかかる国鉄大崎駅(現JR大崎駅)で、住民もまばらだったといいます。そのような中、1923年に関東大震災が発生。被災した銀座や東京下町、横浜の商店主などが、近代化の進む大崎駅周辺に移り商売をスタートさせるようになりました。さらに、1927年に東急池上線戸越銀座駅ができると駅周辺にお店が集まり、商店街の原型が形成されていったそうです。以降、国道1号の拡張工事、首都高速道路の中原ランプの設置、都営浅草線戸越駅の開業などで利便性がさらに向上し、住民数が増。それに伴い、商店街も活気を帯びていくことになります。

現在は、戸越銀座商栄会商店街振興組合、戸越銀座商店街振興組合、戸越銀座銀六商店街振興組合の3つの商店街振興組合で戸越銀座商店街連合会を結成。全長約1.3kmの商店街では、生鮮三品を扱うお店など約350店が元気に営業しています。

  • 今回お話をうかがった亀井哲郎専務理事。1925年に創業したギャラリーカメイの3代目でいらっしゃいます。
  • 発展のきっかけともなった東急池上線戸越銀座駅。2016年12月に新駅舎となりました。
  • 昔ながらの店構えで営業している斉藤青果店。会話を交わしながらお買い物を楽しんでいるお客さまの姿が見られました。
客足が遠のいたバブル崩壊後。「何とかしなきゃという思いでした」

「今でこそ、活気ある商店街として年間400縲鰀500件の取材を受けていますが、バブル崩壊直後は大変でした」と亀井専務理事。大学卒業後は全国展開をする宝飾品専用チェーンに就職したそうですが、29歳の時に家業を継ぐために退職。ちょうどその頃がバブル崩壊のタイミングにあたり、商店街は斜陽の時代を迎えていたそうです。「バブル崩壊もひとつの要因ですが、コンビニやスーパーの台頭、ライフスタイルの変化も大きく関わっていました。共働き夫婦が増えて、商店街の通行者数は明らかに少なくなっていましたね。遠くのスーパーにまとめ買いに行ってしまうものですから、土日は閑散としていました。居住地として人気があるエリアのため、住んでいる人は減ってはいません。原因は商店街に買いたいものがない、つまり商店街が顧客ニーズに応えていないのでは?と考えるようになりました。とにかく何とかしなきゃという思いでいっぱいでした」と当時の様子や思いを語ってくださいました。

現在の商店街の様子。通行止めは15~18時のみのため、今後は行政と調整しながら安心・安全を目指していきたいとのこと。
商店街そのものをブランディング。来街者目線の商店街づくりに尽力

「長く続いていたイベントで地元住民を集めることはあっても、それは一過性のもの。“商店街に買い物客が戻る”ということには直結しませんでした。そこで観点を変えて、広域から集客する『とごしぎんざまつり』を実施することにしたんです。しかし、人を集めるような観光資源があるエリアではありません。そこで商店街そのものをブランディングすることを目指し、ここでしか買えない『戸越銀座ブランド』をいくつか考案しました。戸越以外から遊びにきた人はお土産として、地元住民は手土産として利用してもらえるようになりましたね。最近は観光目的で他エリアから遊びにきてくださる方も多いです」とのこと。
これらの活動がきっかけで、注目されるようになったという戸越銀座商店街連合会。品川区内2カ所で実施される電線地中化事業に選ばれて工事を進めることになりました。さらに、街路灯や道路のデザインを統一したほか、トイレやイスなどを備えた休憩所、ベンチの設置などをし、来街者目線の整備も進めていかれたそうです。

戸越ブランドの商品と戸越銀座商店街のマスコットキャラクター戸越銀次郎(通称ぎんちゃん)。「戸越銀座コロッケ」プロモーションを機に、「食べ歩きの街」、「下町グルメロケの聖地」などとも呼ばれ、全国的な知名度もアップ。
地域の人が自慢に思う商店街として

連合会とは別の組織として、『一般社団法人戸越銀座エリアマネジメント』という、地域の活性化に寄与する団体を立ち上げ、さまざまな活動を地域に還元しています。「連合会で何かをする場合、補助金や助成金、できることの制限を超えられない…そんなジレンマから脱却するためにも必要な組織でした。イベントを提案してきた一般企業と協働し、商店街から有効な情報を発信し続けていけば、日常に商店街が必要なんだとなる。すると、支えるには商店街で買い物しないと、となるわけです」と亀井専務理事。

連合会会員には専用の回覧板アプリを導入してもらい、助成金情報やAIがカウントした通行人数、共有情報などを提供。この通行人情報は、商店街内にあるデジタルサイネージにも「密カレンダー」として公開し、コロナ禍の中、来街者に密状況を伝えることで安心・安全につなげているそうです。実は第1回目の緊急事態宣言下、商店街の様子が報道されると、多方面から“こんな時に密を生む商店街で営業し続けるとはなにごとだ”というような苦情が入ったとのこと。「苦情はそのままにせず真摯に対応するのが筋です。そのため、『新型コロナウイルス対応危機管理ガイドライン』を作成し、具体的な方策を示しました」と教えてくださいました。

コロナ禍になってからは出店ペースが上がっているとのこと。商店街に魅力や可能性を感じてくれている店主が増えているようで、個性的なお店も増えてきたそうです。
「商店街は消費者のものという視点で取り組み続ければ、商店街の近くに住み、子育てをしたいという人が自然と増えてくると思います。人と人がつながれるのも商店街のいいところ。これからも、買い物をする場所だけではなく、地域とつながっていけたらと思います」と力強く語ってくださいました。

2020年9月、商店街内8カ所にデジタルサイネージを設置。密カレンダーのほか、商店街からのお知らせや広告媒体として活用しています。
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