商店街紹介 あきる野市 五日市商和会

かつては木材や炭で栄えた街。時代の流れとともに、空き店舗や空き家が増加傾向に

あきる野市 五日市商和会

戦国時代後期から、五の付く日に開かれていた市では炭などが多く取引されていたというこのエリア。江戸時代になると、いかだに木材や炭を乗せて、秋川や多摩川を使って江戸へ運搬していたそうです。1879年(明治12年)に五日市村が五日市町となってからは近隣の村や町と統廃合を繰り返していきますが、1995年(平成7年)に五日市町と秋川市が合併したことで、現在のあきる野市が誕生しました。
都心から40~50キロメートル圏に位置するこの地は、奥多摩の山々や水源など自然豊かな地域であるため、都民の憩いの場として観光シーズンなどは賑わいを見せます。一方、大型商業施設の台頭、店主の高齢化・後継者不足、人口減などにより、五日市市街地の買い物需要は縮小の一途をたどり空き店舗や空き家が増加傾向にありました。そこで、五日市商和会は、東京都の支援を受けながら市街地再生事業の取り組みに着手。今回は、その事業のひとつである東京五日市せせらぎ暮らしプロジェクトと銘打つ『五日市まち歩き物件見学会』に同行し、当日の内容や感想を交えながら事業について紹介していきます。

 あきる野市 五日市商和会  あきる野市 五日市商和会

ガイド役の皆さん。まちづくり事務所の前にて撮影(上)。緑豊かな五日市の風景(下)。

今回お話をうかがった、タウンマネージャー國廣さん(左)、あきる野市議会議員中嶋さん(右)。

街と物件の魅力を案内する『五日市まち歩き物件見学会』

あきる野市 五日市商和会

『五日市まち歩き物件見学会』とは、まちを歩いて巡る中で、五日市の魅力を伝えながら、空き店舗や空き家を紹介していくというもの。物件案内人として不動産会社が同行するのはもちろんのこと、タウンマネージャー・商店主・市議会議員・あきる野市役所の職員・移住者・建築家などがガイド役となり、約1時間半ほどかけて、複数の物件を見てまわります。
「初めて開催したのは2019年3月のこと。今回は2回目となりますが、市街地再生事業の取り組み自体は2018年からスタートさせています」と話してくださったのは、東京都公認タウンマネージャーの國廣さん。青梅市で取り組んでいた中心市街地再生事業の実績が認められ、あきる野市へも活動の場を広げることになったそうです。「見学会で紹介する物件は、一般の流通物件のように情報が貸主から寄せられるというものではありません。街を歩きながら空き店舗や空き家をピックアップし、所有者様を探し出して1件1件直接交渉するという地道な作業から始めました」とのこと。所有者様が不明なケースも多い中、地元の皆さんの人脈などに助けられながら、紹介できる物件数を増やしていったのだと教えてくださいました。

見学会は午前と午後に各1回、2日間にわたって開催されます。今後の開催情報や参加申し込みは、五日市まちづくり通信SNSページで確認を。

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今回最初に紹介を受けた物件の隣は、2020年9月に開業した美容室。見学会や空き店舗活用講座などにも積極的に参加されていたとのこと。

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裏手に、DIYスペースや遊び場として活躍しそうなフリースペースが備わっている空き家。スーパーや小・中学校が近いなど、利便性の高さも魅力。

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駅から徒歩10分。まちづくり事務所内に掲出されている物件情報。物件概要だけでなく、それぞれ紹介文が添えられているのが特徴です。

五感を使って物件を選べる見学会

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今回同行させていただいた見学会は、2020年11月8日(日)13時半にJR武蔵五日市駅集合。参加者は、都内で飲食店をされているという方で、移住を含めて検討されているとのことでした。 見学会中は名所や五日市の魅力を聞きながら目的地に向かうので、移動時間はあっという間。檜原街道を一歩入ると、古い蔵や戸建てが残る風景があり、タイムスリップしたような感覚と同時に、長く刻まれた五日市の歴史も感じることができました。紹介された物件は見た目もそうでしたが、それぞれの物件につけられたネーミングも個性的。『水作業可ミニマルスペース』『秘密基地付き空き家』『細い路地の家』など、物件を個として紹介している点がより魅力を引き出しています。 元釣具屋さんという物件は、2階の天井がガラス張りと、あまり見たことのないデザイン。リフォームが必要と思われた室内でしたが、この雰囲気がいいからこのままがいいな・・・と参加者の男性。 物件見学というと車であちこちまわるイメージがありますが、歩いて五感を使いながら巡るというのは、実は理にかなっているのではと感じた見学会でした。

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明るい光が差し込む、元釣具屋の2階部分。外階段を使うと屋上まであがることができます。

まずは地域住民にとって魅力的な街づくりを

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「店売りやイベントだけで商店街を再生させるというのは難しい時代になっています。今回のような物件見学会だけでなく、まちの情報を毎月発信する五日市まちづくり通信でも新規開業店を素早く取材しPRするなど、開業者が地域にしっかり着地できるような受け皿づくりも重要です。同時に市街地にある広場の活用もすすめ、地域住民を対象とした野外上映会やビアガーデンを企画し、商店街からの飲食出店や近隣マップの配布を含め、地元での消費を促すような取り組みもしています。地域住民からの消費が手応えになる企画は、市街地のポテンシャルを示す意味で開業者の呼び込みにも効果があります。五日市のような観光資源のある街では、議論の風向きがどうしても観光客に向いてしまい、商店街にとっての生き残り策が本末転倒になりがちです。観光客のイベント参加率は全体の1~2%程度。平日の需要は見込めず、また彼らは洋服や日用品は買いません。大型商業施設は人口減少すれば撤退すると想定し、商店街が地域のセーフティネットとして継続するためには"近隣の方々がメインなんだ"と改めて頭を切り替えてもらい、"新たなニーズを開拓するつもりで街ごとを考える"ことが重要です。そのためにも、地域の人が街で消費を楽しみながら滞在できる企画、個店の集積を推進しつつ歩ける範囲で日常生活を満たせること、商店主だけでなく地域の様々な人が役割をもって関わるネットワーク、これらを具体化するような街づくりがポイントになると思います。そうした街が形成されることで魅力が増し、来街者にとってもまた訪れたい場所になっていくのではないでしょうか」と國廣さん。今後もあきる野市や商工会と協力しながら、地域ぐるみで支え自立できる街づくり活動へ向けて、物件調査や情報発信、開業者のマッチング活動は積極的に支援していきたい、と考えているそうです。

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毎月紙面として発行している『五日市まちづくり通信』。新店舗の紹介や移住者インタビューなど旬な情報を掲載。商店街の店舗や旧五日市町エリアの家庭に配布しているそうです。

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商店街イベント

中元・歳末売出しセール(年2回)、ヨルイチ、五日市ほしぞらシネマ/たそがれ映画祭など。加盟店の若手が主催する、五市マルシェ、ライブフォレストフェスなども人気が出てきています。

入会メリット

イベントへの参加、Facebookへの掲載など

商店街情報

※掲載の情報は2020年11月時点のものです。